■ 擁壁補強が必要で水道管が隣地経由している事例 ≪神奈川県 築18年 戸建て≫
◆東側擁壁補強について
擁壁補強の概算見積りも頂いたので、お送りします。擁壁補強の見積もりは、「敷地内でコンクリート増し打ちする分の厚みを確保することができる、もしくは、越境する場合には東側隣地の承諾が得られることを前提に」作成して頂きました。『擁壁説明_現地再確認後変更.pdf』2ページの写真③の境界杭については目視 で確認できたので、この杭と当該物件(以下、本物件)擁壁と同程度の距離を保った位置に東側隣地南側境界杭があれば(黄緑色■で記した杭)、増し打ち分の厚みが確保できそうですが、黄緑色■の杭については現地で目視確認できなかった為、はっきりとしたお答えはできない状況です。また、黄緑色■の杭の場所に関わらず、東側擁壁の補強工事施工に際しては、東側隣地への立ち入りが不可欠の為、東側隣地所有者の方にその旨承諾して頂く必要があります。また、増し打ちと合わせて1.5~2.0m程の長さのボルトを水平方向に打ち込みますので、将来再建築の際に杭基礎による工法が必要となった場合には、干渉することもありえると思 います。
◆北側擁壁について
前回の説明資料では、「北側の古い擁壁については高低差が3mないと」記載しておりましたが、改めて現地で確認してみると3高低差が大きい部分で3mは超えるようでした。 なので、再建築の際にはその部分の擁壁のやりかえ工事を求められる可能性があります。再建築の際には、最終的には設計士が現状のままで問題なし、杭基礎等で対応可能、作り直し必須といったような判断をしていくことになります。この部分の擁壁については本物件所有者含め、私道所有の複数の所有者で共有している形となっているので、杓子定規に言えば全員でお金を出し合うということになるのですが、実際には本物件所有者の都合で再建築したいと言っているだけなので、「お金を出さなくてはいけないのであれば工事に同意しない」と判断する共有者が現れる可能性が高く、現実的には本物件所有者のみの費用負担あるいは、西側隣地と共同で費用負担して工事ということになるのではないかと思います。
◆ライフライン引き込みし直しについて
まず先日の立ち合いの際に売主さんに南側隣地経由で引き込んでいる経緯についてヒアリングしましたので、その内容を報告いたします。売主さんが居住を開始した当時は現在ある北側道路配管が無かったそうです。南側には既にその当時から配管されており、利便性(浄化槽と比較して)を考えた結果、南側隣地から引き込むことにしたとのことでした。現在北側にいくつも家が建っていますが、以前は大きなお宅が2つあるのみだったそうで、北側道路のところまで本管を引き込んでくる必要が無く、上記のような状態になったものと思われます。
引込工事の概算見積もりをご覧下さい(添付資料)本物件の北東側道路(本物件の接道)に本管が通っているのですが、この管は公共のものではなく、北側周辺住戸数件で埋設した私設管ですので、水道工事にあたっては、その旨その周辺住戸の方の承諾が必要となります。承諾が取れた場合には、北側道路から直ぐに引込むことができるので、Aプランの見積もり金額、承諾が得られなかった場合には私道を抜けた先にある公道から引込みしなければならないので、かなり長い距離の工事となり、Bプランのように高額になります。
尚、今回の物件の場合は、道路面との高低差があるので、水圧を強めるための増圧工事(+αのコスト)が必要になる可能性がありましたが、この辺りは給水圧が高いようで、工事業者曰くポンプは不要との回答でした。
Aプランが私有給水、私有排水の承認が出た場合・・・140万円
Bプランが市道から新規で引き込む場合・・・360万円です。
また宅内配管取り回しについては現況調査していないので、金額は不明ですが、掛かったとして凡そ20万程度ではと思います。見積は道路復旧までで見ていますので、宅内以外の追加項目はないと思います。上記のような不確定要素があるようですが、いかがでしょうか?
実際に弊社のエージェントがお客様へお送りしたメールを、以下に事例としてご紹介します。エージェントから物件のご提案をすることはもちろん、お客様から物件情報をいただき、その物件についてイレギュラー要素がないかも確認します。
徹底した物件調査と情報開示 × 精緻な資金計画立案
■ 財政難の管理組合であることがわかった事例 ≪東京都 築44年 マンション≫
お世話になっております。先日奥様より宿題を頂いた件について確認を致しました。本マンションは財政状況が芳しくなく、管理状態が良くありません。ご質問の中にリフォーム費用やエアコン設置についてもあったのですが、管理状態の部分を許容できるか否かの方が優先順位の高い検討課題なので、リフォーム・エアコンの二点については調査未了ですが、取り急ぎ今回の報告をさせて頂きました。添付資料はマンション管理をしている会社が発行しているものです。本資料をベースに私から管理会社に問い合わせをし、ヒアリング等行ないました。ポイントとなる部分に赤ペンでメモを書いてあります。ポイントを要約すると、「マンションの老朽化で修繕工事が必要だが、財務状況が芳しくなく、借入を起こして工事を実施している状況。」という感じです。
○修繕の履歴 ⇒添付資料の「重要事項に係わる調査報告書」のページの右側をご覧ください。
○予定している大規模修繕の内容、追加金の有無
⇒H27年に連結送水管の改修工事を予定しているとのことです。この送水管は消防の設備で、今あるものが劣化しているので、改修をするということになっているそうです。重要事項に係わる調査報告書に記載されているように、現在の組合の修繕積立金に関する口座の残高はマイナスですので、管理費の部分から充当し、さらに不足する場合には、新たに借り入れを行なうことになるかと思います。尚、この工事に際しての追徴金について管理会社の担当者に尋ねたところ、「修繕積立金を今年の6月にあげたばかりなので、追徴金という方式は採択されないと思う」との見解でした。この連結送水管工事の他、長期修繕計画表のH27のところに金額が計上されている工事を実施することが好ましい(一部実施済みのものあり)のですが、財務状況を考えると、今年に計画通りすべてを行なうのは困難ではないかとのことでした。
○漏水、事件、事故、トラブル等の有無⇒添付資料の「議事録」の中に赤丸を付けた箇所があります。過去に外壁からの漏水があり、それが北側外壁の修繕工事をする理由にもなったとのことでした。工事後は漏水が無くなったとのことです。事件、事故、近隣トラブル等については管理会社が知っている情報はないとのことでした。
○固定資産税額 ⇒76,786円/年
あまりお勧めできる状況ではないように思いますが、いかがでしょうか。
■ お客様持ち込み物件/市街化調整区域の事例 ≪埼玉県 築5年 戸建て≫
いつもお世話になっております。メール有難うございます。早速物件をお調べしてみました。まずは添付の販売図面をご覧下さい。販売図面のには、「市街化区域」ではなく、「市街化“調整”区域」と書かれています。続いて、備考欄に「~~~の為再建築可能」と書いてあります。この市街化調整区域という点が、通常ではイレギュラーな部分です。備考欄に書かれている法律の抜粋がもうひとつの添付PDFです。関係する部分を黄色で塗りました。難しいので要約すると、市街化調整区域が指定される前から住宅地になっていたところは「既存宅地」という扱いになり、建築することが可能である。また、既存宅地制度廃止後も開発許可を受けて開発された地域に存する場合には建築可能という意味かと思います。これを踏まえて、下記のリンク先をご一読ください。
■市街化調整区域の“既存宅地”について
http://allabout.co.jp/gm/gc/25771/ →このオールアバウトの記事では結構強い言葉でイレギュラーな要素を書いてあります。
今回の調査でポイントとなるのは下記2点です。
①再建築は可能か?
【補足】不動産売買では、再建築(建て替えのこと)できる土地か否かの確認が最もと重要なポイントです。建物を建築せずにその不動産を利用する場合には、用途がかなり限定されてしまうため利用価値が低く、価格も安くなってしまいます。≪お客様名≫さんが将来建替えをするかどうかは分かりませんが、仮に売却することになった際に、次の買い手が建替えをしないとも限りません。なので、将来現金化することを考えた場合には、ここが大変重要になります。
②道路等ライフラインの更新費用はだれが負担するのか?
【補足】今回は市街化を抑制する地域である「市街化“調整”区域」に指定されています。市街化を抑制する地域なので、道路の修繕、上下水道の修繕等については、実費負担となっているかもしれないと思ったので、確認を致しました。まず、上記①について。結論から申し上げれば、再建築は可能です。ただし、下記の前提条件のもとの回答である旨、ご理解ください。
A.再建築に関連する法律等が、現在と将来再建築する時点でのものとが変わっていなければ。
B.今回の物件を含めた開発区域内で、分筆・合筆等、敷地の区域が変化していないこと。
上記A.については、ごくごく当たり前の話しで、将来の法整備については誰も分からないので、このような表現にせざるを得ないのですが、Bについては分かりづらいので少し補足説明を致します。今回の不動産は「既存宅地」制度が廃止された後に、「開発許可を受けて」開発された宅地の為、再建築ができるということでした。開発許可というのは、例えば“林を切り開いて大規模な宅地にする”といったように、大規模な土地をまとめて開発して宅地にするようなことです(林に限りません)。今回の不動産は、平成20年9月10日に開発許可(都市計画法34条11号)を受けて、約1,890㎡、10棟の建物を建てる宅地として開発された土地の一部に該当します。簡単に言えば10棟現場の新築分譲地の内の一区画という意味です。上記B.で言っているのは、開発許可当時と再建築の申請を出すときとで、敷地の区域等が変化していなければ、許可がおりるという意味です。変化している場合には、狭山市開発審査課で許可できるかどうかの審査を再度受けることになります。敷地の区域の変化とは、例えば元々1区画だったものを2つに分けたり(分筆といいます)、2区画を1つにまとめたり(合筆といいます)することです。これは、今回の分譲地10区画内の内、今回の物件に関係ない部分で分筆・合筆等が行われた時も同様に、再度審査を受けることになるそうです。私見としては、分筆・合筆等がなければ上記Aの条件のもと問題なく再建築できるということでしたので、再建築という部分に限ってはイレギュラー性は低いと思います。
尚、再建築の際の建築確認申請で、通常の市街化区域と違う手続きが増えることがあるそうで、確認申請の審査を行なう建築主事に「適合証明書」の添付を求められることが多いそうです。適合証明書は○○市開発審査課が発行して下さるそうで、費用は6,000円だとのことでした。つづいて、上記②について。結論から申し上げると、電話でのヒアリングは受けつけてくれず、窓口に行って確認をしなくてはいけないとのことでしたので、調査未了です。道路についてのポイントは、今回の物件が接している道路が市又は県の持物なのか、あるいは私道なのかというところです。後者の場合は、修繕費用を所有者が負担しなければならない可能性があります。ただ、チラシには公道と記載されていますので、恐らく前者の方に該当するかと思います。(念の為に確認しますが)その他、上下水道については私の時間の都合上(申し訳ありません、この後外出しなくなってしまいまして)、確認未了です。この2点もチラシには公営水道、公共下水と書かれていますので、恐らく問題ないかと思います。
Due diligence
■ お客様持ち込み物件/鉄骨造店舗付住居の事例 ≪神奈川県 築32年 戸建て≫
お世話になっております。お電話がつながらなかったので、ひとまずメールで所感をお伝え致します。
まず、ローンのところを注意する必要があるかと思います。住宅ローンは住宅取得のための融資ですので、店舗や事務所の取得には融資を出さないことになっています。なので、本物件の場合は1階が店舗で延べ床面積のうちの1/3を占めておりますので、現状のままでは4,850万円の2/3、3,233万円まで融資しかしないというのがベースとなります。店舗部分をリフォームで住居に変えるなどすれば、残りの1/3も融資を受けられるかもしれません。2F、3Fの間取りを考慮すると1Fはガレージにするのが良いかと思いますが、ガレージへの用途変更で融資を引き出せるか否かは週明けに金融機関に確認してみます。
構造については鉄骨造ですがチラシで見る限りでは新耐震基準なので問題ないでしょう。築25年(耐火構造の場合)を超えているので現状では住宅ローン減税等は利用できませんが、上記の通り構造は新耐震なので、劣化事象がなければ瑕疵保険を付保することで、減税等が利用できるようになります。
それと、鉄骨造のビルという事で、建築当初は居住を想定していなかった可能性もあります。その場合には、断熱性能は通常の住宅と比較すると落ちますので、冬も室内はTシャツで快適に住もうと思うと断熱工事もリフォームとして考えておかなくてはいけません。普通に住む分には、現に人が住んでいらっしゃるわけですので住めるということでしょう。個人的には、上記のような快適さまで求めず、このように商店街のように立地の良いところの小規模ビルを住居に変更してというのは好みなのですが、快適も求めるのであれば、リフォームの金額は多めに想定しておく必要があります。物件代金+1500万円程度の予算でも問題なければ、一度ご検討を頂き、建築士による建物調査なども進めていくのが良いと思います。1500万円であれば、仮に本物件が使えない状況であっても建て替えに切り替えるという手段もとれるとおもいます。
■ 資金計画の事例
≪某大手≫銀行一本とフラット+アプラス併用の比較について、下記の条件で試算してみました。
①≪某大手≫銀行借入額:4,380万円
借入期間:35年間
返済方法:元利均等
金利プラン:固定10年金利(融資金利1.2%。最優遇の-1.7%適用と想定。)
※11年目以降は再度金利プランをその時の金利で改めて選択することになります。今回は、10年ごとに1%金利が上昇すると想定。
②フラット35+アプラス
借入額:フラット3,980万円+アプラス400万円
借入期間:同上返済方法:同上
金利プラン(フラット):10割融資のフラット35S適用。当初5年間は0.99%、6年目以降は1.59%
金利プラン(アプラス):変動金利。
※アプラスの金利については、現在の金利は3.225%ですが、シミュレーション上は向こう10年の金利変動を考慮し、4.225%からスタートしています。以降10年ごとに1%ずつ上昇すると想定。
今後金利上昇のリスクが高いという前提で考えた場合、結論から申し上げると15年超、返済をつづけるのであればフラット。10年以内又は10年超数年の間に売却する可能性が高いと判断されるようであれば、≪某大手≫銀行(10年固定)の方が安いと思われます。※賃貸に出すという選択肢もありますが、今回は省略致します。
まず、35年返済するという前提のもと、融資実行時の手数料や保証料等の諸経費、利息負担等、35年間にかかるコストを全て合せて比較をすると、フラット35の方が約36万円安くなります。それに加え、≪某大手≫銀行は、固定期間が終了する11年目以降は改めてその時の金利で金利プランを選択しなければなりませんので、借入額全体に渡って金利変動リスクを負うことになります。フラット+アプラスの方はアプラス部分が変動金利になっている為、今回のシミュレーションで想定している400万円に対してのみ金利変動リスクを負うことになります。
考え方としては、向こう10年間だけで比較した場合、≪某大手≫銀行10年固定の金利は1.2%、フラット35は0.99%が5年、6年目以降が1.59%となります。金利のギャップがありますので、5年間はフラットの方が安く6年目以降はフラットの方が高くなります。10年間の利息負担累計で比較すると約20万円フラットの方が安くなります。但し、フラットの方はアプラスが加わりますので、それも加算して比較すると10年間の利息負担は下記のようになり、約90万円フラット+アプラスの方が利息負担が多くなります。
≪某大手≫4,632,193円
フラット35+アプラス5,550,539(アプラスの金利変動考慮せず)
11年目以降は、≪某大手≫の方が借入残高全体に対して金利変動リスクを負っていくことになりますので、≪某大手≫の金利がフラットの1.59%を超える期間が長ければ長い程、≪某大手≫の方が負担が増えていくということになります。
≪お客様名≫さんから伺っているご要望では、比較的短期でのお住み替えを視野にいれていらっしゃるということだったと思います。それも踏まえて総合的に考えた場合、例えば10年後の住み替えの時に、今回の家を「売却してしまう」ということであれば上記の説明の通りとなります。